世界的に人気の高まるアドベンチャートラベルに対応するため、マウンテンバイク・ガイド養成をスタート

一般社団法人日本サイクルツーリズム推進協会(JCTA)は、この度、世界的に人気が高まっているアドベンチャートラベルへのニーズに対応するため、マウンテンバイクやグラベルバイクのスキル・モジュールを導入いたしました。

本取り組みは、当協会に所属するサイクリング・ガイドを対象としたもので、オフロードでのライドテクニックを身につけるとともに、リスク管理やロードサイド・メンテナンス、マップ・リーディング、環境への配慮など、お客さまに自然とふれあいながら、アクティビティや異文化体験を安全に楽しんでいただけるツアーを提供することを目的としています。

初回となる今回は、5月8日〜5月15日に北海道鶴居村にて、当協会がパートナーシップを結んでいる英国CTC「Cycling UK」から講師を招き、「Mountain Bike Trail Leader」、並びに、「Technical Mountain Bike Leader」の2つのコースを実施しました。今秋からは日本人の講師による講習を実施し、より多くの方々に大自然の中でサイクリングを楽しんでいただけるような体制を整えて参ります。

講習の内容について、参加者からの活動報告がございましたので、以下にご紹介いたします。

JCTAガイド向けスキルアップ研修

マウンテンバイク/グラベル講習@北海道鶴居村に参加して

北海道阿寒郡鶴居村にあるHOTEL TAITO(JCTAガイド和田氏経営)と近隣フィールドにて、MTBグラベル&MTBガイド講習(5/8,9,10)、テクニカルMTBガイド講習(5/12,13,14)、インストラクター講習(5/15)が開催された。また、休息日の5/11にはJCTAガイドの西原氏による「Lake Mashu Trail Tour」を催行。JCTAガイド同士の交流も深まり、充実の8日間となった。

グラベル&MTB講習日程

このHOTEL TAITOにおいてMTBグラベル&MTBガイド講習(5/8,9,10)、テクニカルMTBガイド講習(5/12,13,14)、インストラクター講習(5/15)を実施。講師担当はCycling UKからMatt Woodcook氏。座学、実技ともに全編英語による講習となった。

休息日の5/11は、任意参加にてJCTAガイドの西原氏による「Lake Mashu Trail Tour」を催行。

鶴居村の美しいフィールドで講師、JCTA会員同士の交流、意見交換も盛んに行われ、今後日本国内において隆盛するであろう「アドベンチャーツアー」、「MTB」「eMTB」を活用したツアー運営目線のルート管理、工程管理、安全管理、トラブル対応等を体系的かつ具体的に学んだ。

講習開催に向け様々なご準備をして下さった和田氏、HOTEL TAITOのみなさん、Lake Mashu Trail Tourを企画引率してくださった西原氏、講師Matt、前編英語講習の翻訳解説などのサポートをいただいた西田氏、竹之内氏に参加者の一人としてこの場をお借りし、感謝申し上げたい。

グラベル&ベーシックMTB講習

Day1 (5/8)

天候は雨。この日は自己紹介とアイスブレイクからはじまり、座学中心。講師Mattのフィールドである英国はほぼ雨が降らないようだが、ここ日本は降雨のある地域特性である。ツアー運営目線であれば、予約確定→催行前日、当日に荒天予報の場合のキャンセルポリシーをしっかり決めておく必要もあろう。

HOTEL TAITOの温泉客向け休憩室にてCycling UKの定めるカリキュラムに沿ってスライドや動画で

・アウトドアフィールドにおけるツアー催行準備ツール
・ツアー催行中の各種ナレッジ
・機器メンテナンス

などの具体例を学んだ。

また、2日目以降の研修コース(約7km、オンロード、グラベル、丘陵エリア、トレイル)の解説を受け、3日目に実施する検定の概要説明と各人担当範囲、ツアーリーダー、エンドマーカー役の順番を決定。


Day2(5/9)

前日策定した研修コース約7kmを、Cycling UK基準ツアー催行の目線で各所解説を受け実践しながら実走行。加えて、ツアー参加者のスキルチェックの手法、ミニゲーム活用コミュニケーション手法の解説、実践。

研修コースの丘陵、高原エリアでは鶴居村の素晴らしい眺望や楽しいトレイルライドに参加者一同、テンションが上がり写真・動画撮影タイムなども。

屋内座学は翌日実施予定の「機器メンテナンスと応急修理」課題の各人割り振り、地図読み概要、ツアーで活用できるスマホアプリなどの紹介等を実施。

前編英語による講義ではあったが、西田氏と竹之内氏による翻訳フォローもあり参加者は多くの知識、事例を学ぶことができた。

最終はMattとの個人面談(Chat with Matt)。
フィードバックや質疑応答で疑問点を都度解消。(英語によるコミュニケーション必要性を痛感しながら)

Day3(5/10)

標準コース最終日は、前日割り振られた「機器メンテナンスと応急修理」課題を「ツアー参加者の対応想定」にて実施。事前にかなり練習した方も多くいた様子で、皆さんスムーズに課題をクリア。

後半はツアーリーダー、エンドマーカー役、参加者役をローテーションさせながら検定コース7kmを2周回。前後にツアー参加者スキルチェック、ツアー参加者のスキルチェック、ゲームを挟みながら検定を実施。

参加者全員、無事合格となった。

休息日の5/11は有志参加の「Lake Mashu Trail ride」

Lake Mashu Trail ride】(5/11)

早朝にHOTEL TAITO出発、西原氏所有の知床サイクリングサポート様ハイエースに自転車を積み込み北へ80kmほど。スタート地点の裏摩周展望台へ。

裏摩周展望台のある摩周湖は、北海道川上郡弟子屈町にある湖。世界一透明度の高いバイカル湖に続いて、二番目に透明度の高い湖と言われる。西に国道391号線、JR釧網(せんもう)本線を挟み同国立公園内の屈斜路湖、阿寒湖を含む「阿寒摩周国立公園」にある。

この周辺のエリアを今回「Lake Mashu Trail ride」としてeMTBで案内いただいた。

国立公園内に入ると小雨がぱらつきはじめ、スタート地点まで標高が上がるにつれフロントガラスに付着する小雨はみぞれから徐々に雪へ変わる。一般的には「テンションの上がらない空もよう」ではあるだろうが、われわれJCTAガイド、インストラクター的に表現するなら「恵みの雨(雪)」であろうか。

美しい自然に溶け込む感覚を覚え、時に霧、しとしと雨音に包まれる幻想的なトレイルライド。難所も多かったものの、西原氏の的確な先導と危険箇所説明によりとても楽しくテクニカルなe-MTBライド。eMTBのポテンシャルを感じ、これからのアドベンチャー系ツアー企画はe-Bike主体で参加者、愛好者の裾野を広げる活動も必要であろう、と。

帰路は硫黄山などのいくつかの観光地も案内いただき、充実した休息日となった。
(西原さんありがとうございました!)

テクニカルMTB講習

標準コース受講、クリアが必須要件の「上級MTB講習」。
ルートプランニング、安全管理、走行管理、ライドスキル、ツアー参加者スキルチェック、ガイドスキル全てに数段上のレベルが求められる。
標準コース同様、座学+難易度を上げた増設コースにて講習実施。

この増設コース、ダウンヒルかつ落差のある箇所、コース取りにより走破が厳しくなる狭小路急カーブなど、テクニカルな設定であった。

上級MTB講習のトレイルコース増設については、Mattのリクエストにより和田氏と西原氏が中心となり打ち合わせ、早朝から数時間かけてコースの整備を実施したと聞いている。この場をお借りし、重ねて感謝を申し上げたい。

Day1(5/12)

当日は雨。標準コース同様、座学中心の初日。標準コースでも活用したテキスト、より深掘りした内容でMattによる解説。バイクスキルチェックの様々な動きを動画で。自転車に乗りながらの停止、再始動、前輪を上げたり、後輪を上げたり、その他バニーホップ等々。

これらの動きが安定して出来ることは、トレイルライド中の様々なストラクチャーを自身が安全に走行し、ツアー参加者が安心してその後を走れるという余白が生まれるのであろう。日々のMTBライドの必要性を痛感する。

午後は天気が回復、バイクスキルの様々なアクションを実践。受講者みなさん笑顔でチャレンジする姿を見るにつけ、新しいことを覚えることは楽しい事であると再認識。

今後実施するであろうMTBトレイルツアーも、参加者のみなさんにこれらの「楽しさ」「笑顔」を提供できるようになりたいと強く感じた。

Day2(5/13)

午前は増設されたテクニカルな研修コースを、Cycling UK基準のツアー催行目線で解説、実践しながら実走行。こちらも、ツアー参加者のスキルチェックの手法、コミュニケーション手法の解説、実践。

増設コースは勾配も急で道幅も狭く、前輪と後輪の内輪差を理解してトレースするスキル、精緻なバイクコントロール、バイク上の自分自身の重心コントロールが必要であり、MTBライドスキルを磨くモチベーションの湧くコースであった。

参加者のスキルチェック、ツアー催行中には「参加者がhappyであるかどうか」を常に確認しながら、たとえば周回コースがあるなら「上級者にはトレイルを周回する」「自分には難しい、と感じている初級、中級者に対してはあまり無理させない」などの判断も必要、とMattの解説。

ツアー参加者は決して「無理です」などとは言わず、「大丈夫ですか?」と聞けば「大丈夫です」としか答えない。これらはオンロード主体のこれまでのツアー運営経験上多いに頷けるところであり、特に自然相手のトレイルライドツアーではより意識を高める必要があるのであろう、と実感した。

午後は地図読み実践編、HOTEL TAITO庭園エリアにて実物コンパスを活用し、東西南北(0度、90度、180度、270度)に進みコーンを置く、というもの。
スマホ全盛の現代、スマホナビやデジタルマップに慣れている我々としては、アナログコンパスを実際に用いて「進行方向を調べ、進む」行為は新鮮であった。
スマホ電池が切れた、もしくは無い状態で「現在地を把握」し「迷わず参加者を誘導」する為にはこれらを知識として持つだけではなく実際に使える様になっておくべきと痛感。

講義終了後、数名で新コース再確認のテストライドへ。それぞれ自身担当区間のルートを確認、どのタイミングで何を参加者に伝えるか、テールガイドとの連携等のチェックを実施。

Day3(5/14)

天候は良好、午前はHOTEL TAITO近隣の空き地から模擬ツアースタート。参加者スキルチェックやゲームなども実施。みなさんそれぞれの区間を個性も織り交ぜつつテールと協調しながら走行。

難易度の高いルートではバランスを崩して足をついたり、転倒する者もいたが皆それぞれ実力を発揮。怪我なく無事、模擬ツアー終了。

屋内に戻りMattによる確認解説、評価により合格、次のチャレンジへの準備期間となった者それぞれであったが、総じて皆新たなスキルを獲得しこれからの各人のサービスへ即実践できることが大いにあり、実りのある講習であった。

インストラクター講習(5/15)

インストラクター講習は、上級MTB講習合格者向けの「ガイドを育成する目線」で「何を伝え、何を評価基準とし、実践するか」の講習。
Cycling UK基準のガイド評価用各種ツール、ツアー催行中使用ツール紹介、ツアー組成に必要な項目などの解説。

この講習受講後、JCTA主催によるMTBガイド育成講座がスタートすると聞いている。
日本特有のサイクリング文化、地理的要因、天候要因などはCyclingUK基準そのまま適用可の部分、ローカライズが必要な部分もあろう。

JCTA会員のこれまでの知見も併せ、今回のCycling UK基準のフォーマットを日本仕様で具体的活用するにはどうすれば良いか。
MTBツアーを催行するにあたり自治体や地権者の方、地域住民のみなさんとどう連携し、調整を進めれば良いか。

個人の立場で講習内容を活用実践し、日本のサイクルツーリズム発展に寄与できれば嬉しい。
国内顧客向けアドベンチャーツアー、MTBツアー企画、インバウンド対応に活かすべく、
今後開催予定のJCTA主催MTB講習でも学びの機会を得たいと考える。

会場として、お世話になりました!

鶴居村&ホテルタイト&休息日のライドを提供してくださった知床サイクリングサポートについて

鶴居村は、北海道の道東、釧路市から北西約30kmほどの阿寒郡にある村。日本で最も美しい村の一つとして知られ、その名の通り「丹頂鶴」が生息する村としても有名。釧路湿原などの観光資源、点在する牧場では乗馬トレイルなどのアクティビティも人気。写真撮影で訪れる観光客も多く、インバウンドツーリストにも人気の村である。

アクセスは釧路空港から車で約30分、JR北海道釧路駅からは車で60分ほど。自転車持参であればタクシーやハイヤーなどを活用、荷物がさほど多くなければ自走で訪れることも十分可能。

研修会場のHOTEL TAITOは鶴居村で1916年創業。レンタカーやタクシーで自由きままにドライブを楽しむプラン、プロ写真家(和田氏のお父様)による釧路湿原国立公園の特別保護区を案内するネイチャーガイドプラン、和田氏ほかガイドが引率する「地元の人しか知らないような穴場スポットに行きたい」「インスタ映えするスポットで写真が撮りたい」など様々なリクエストに対応するロードサイクリング、eMTB等のアクティビティも提供している。

ホテル1Fにアルカリ性天然温泉「美人の湯」、同レストランは地元の食材をふんだんに使った朝食、夕食(どちらもボリュームが凄く大満足)。客室は自転車をそのまま持ち込むことが出来、壁にはディスプレイスタンドも設置され、北海道自転車旅の拠点、立ち寄りスポットとしてもお勧めの宿である。

鶴居ノーザンビレッジ HOTEL TAITO
北海道阿寒郡鶴居村鶴居西1丁目
https://hotel-taito.com/

知床サイクリングサポート
斜里郡斜里町ウトロ東96
https://www.shiretokocycling.com/