10月24日、都下に敷かれていた緊急事態宣言の解除を受け、今年度2回目となる「子供のためのBikeability自転車教室」を東京都千代田区の皇居パレスサイドにて開催しました。当日、担当したサイクルインストラクターの一人から活動報告が届きましたので、ご紹介いたします。(編集部)

今日は子供の自転車教室にインストラクターとして初参加しました.教室は午前10~12時,午後13~15時の2回,各2時間ですが,朝8時から設営,撤収は5時と実際には9時間かかりました.途中30分程の昼食休憩以外は立ちっぱなし,駈けずり廻りで14000歩以上とゴルフのラウンド並みになりました.

設営は,
1.車からテント,机2,椅子2,コース設営用のコーン数十,虎棒十数本,子供の自転車11台,などを降ろして,
2.テントを張って,受付の準備.
3.自転車は詰め込むために色々いじって有るのを復元,つまり全車にペダルを付けて,ハンドルを緩めて曲げてあるのを戻して固定,ブレーキワイヤを外して有るのを付けて,パンクしてそう,とかブレーキの都合の悪いとかの修理をして,安全を確認.大小各種有る自転車を大きさ順に並べます.
4.コーンと虎棒で,広いエリアの中で講習用の区画を区切り,コーン,テープで教
習所風のコースを作成,と設営の2時間はあっという間に過ぎました.

受付を開始すると,子供達を連れてご両親,保護者が登録します.自転車,ヘルメットを持参の方も居ますが,こちらで用意したものを使う方もいますので,子供の大きさに合う自転車を案内し,サドルの高さを合わせて締めて固定し,乗って試してもらいます.ヘルメットには名前を書いたテープを貼り,名前で呼びかけられるようにします.私のように名前を覚えるのが苦手な人間にはありがたいことです.

開講します.
インストラクターの自己紹介から始めますが,呼びかけに元気な返事を貰うのが第一歩です.
最初にヘルメットのかぶり方を実際にやってみます.正しい位置で,動かないように緩み無くダイアルとあご紐を締めますが,大人でも習った事は無い方が多いかと思います.
次がバイクのチェック.空気圧,ブレーキ,チェーン,少し持ち上げて落とす,いわゆるABCDチェックですが,保護者の方が見ているのが大事かと思います.

さあ,走ります.スタート・ストップの練習ですが,そうは言いません.出発ラインから向こうのコーンまでみんなで走ってみましょう,と声をかけます.密集すると隣と接触したりしないか心配しましたが,子供達は適当に分散して走り出し,私の杞憂でした.

ここで一人の子が動きません.どうしたの,と聞いてもモジモジ.怖がられたかと思いましたが,実は自転車に乗れないので走り出せない事がわかりました.時々ある事のようで,これはインストラクター初心者の私には無理.ベテランにお願いします.乗れない子の様子を遠目で見ていると,ともかく自転車を楽しんでもらう為に,色々工夫して,飽きさせないよう休憩しながら,付きっ切りで遊べるようにしています.入口で楽しいと思うか嫌に成るか,大事な時だと分かります.

スタート・ストップで大事なのは,ブレーキをかけて止まること.実際には足でケンケンとやって速度を落として停まる子が多いけれど,危険なのでブレーキをかける事だけは覚えて欲しいと思います.ケンケンスタートも良くはないのですが,安全な停止が最重要です.

続いて,ゲームを色々やります.それぞれ基本動作を覚えるための動作,例えば振り返って後方確認,が織り込まれていますが,楽しく自転車で遊ぶのが大事なので,子供達の評判・反応により毎回ゲーム内容は入れ替わります.

休憩を入れて,後半は教習所風のコースで実戦的練習です.外周コースには停車している車両もあり,運転者がドアを開ける可能性まで考えるように練習します.一時停止や信号,そして路面の段差を想定したハンプまであります.インストラクター達が総出で「一時停止だよ!」「後を見て!」「左右を見てからスタート!」と声を掛けまくります.自転車に乗り慣れていない子がハンプに向かうと両側で待ち構えて転倒させな
いように備えます.

転んで泣く子も無く,無事に楽しく講習を終了し,修了証を渡して記念写真を撮って解散です.保護者の方達もシャッターを切ります.

ここから午後のセッションに備えて準備です.自転車とヘルメットを消毒し,コースを一部修正し,午後の受付開始までの間に芝の上で昼食です.風もなくうららかな日和の日曜でも有り,周囲には昼寝や読書,親子連れ,色々な方がゆったりしています.絶好の講習日和です.

午後の受付が始まりました.開講時刻になっても見えない方が複数います.仕方がないので集まった子達だけで開講します.
少し遅れて何人か来ました.そこまでの講習分を個別に教えて合流します.

講習中にどこかから大きな風船が放され,ビル街の上空に上って行くのを子供達が発見,騒ぎ出しました.一つ,また一つと上がります.午後の部の子供達は乗り慣れた子が多く,自転車に不安は少ないのですが,気が散って講習ができません.次はトンボを発見し,また一騒ぎ.
それでも上手な子が多く,早めに進んだので,追加の上級者用ゲームを加えて,講習を修了しました.

終了後は撤収,使用機材の消毒と,設営の逆で全てを車に積み込みます,と言うよりジグソーパズルのように詰め込みます.隙間にゴミの袋を押し込み持ち帰ります.

解散後,子供達が喜んでくれたのをお土産に,自転車に乗って帰宅しました.

報告:K. I. (JCTA認定インストラクター) 

受付用のテントの組み立てと自転車の準備

ヘルメットの被り方を学びます

準備運動もしました

信号機(!?)も設置して、2段階右折の練習です

停まっている車を追い越す時は、突然ドアが開くかもしれないことを予想して、離れて通過します

狭い路地へと左折する時は、出会い頭に車にぶつからないように、ぎりぎりでは曲がりません

元気に勉強し、楽しく遊んだ後は、修了証をもらいます

日本サイクルツーリズム推進協会が推進する子供のための自転車教育「Bikeability」について

日本サイクルツーリズム推進協会は、英国で140年の歴史を持つ CTC (Cycling UK)と提携し、英国運輸省のBikeabilityプログラムを日本の道路交通法や日本の道路環境に合わせて再構築し、日本に導入することで、日本の子供たちのための自転車教育を推進して行きます。

その第一歩として、英国運輸省の基準に準拠したインストラクター認定制度を導入し、質の高いサイクリングインストラクターの養成に着手致しました。以下に英国での具体例をご紹介します。日本サイクルツーリズム推進協会は中期長期的に同様のスキームを目指します。

以下に英国政府が進める子供のための自転車教育についてQ&Aで解説します。

〜英国のBikeabilityについて〜

1、子供たちはいつBikeability自転車教室を受講するのですか?

Bikeability自転車教育が導入されている英国では、多くの場合、小学生4年生〜5年生が、授業時間、または放課後などを使い、レベル1と2を組み合わせ学んでいます。

個別に実施する場合は、レベル1は小学校3年生以下を、レベル3は中学1〜2年生が対象となります。

2、Bikeabilityを誰が教えていますか?

英国では運輸省(Department for Transport, DfT)が認定したインストラクターが教えています。国家資格にすることで、授業内容の質を担保し、児童保護などにも配慮した授業が可能となります。日本では、日本サイクルツーリズム推進協会が英国の教育団体(Cycling UK)と提携し、Bikeabilityインストラクタ-を養成しています。

3、英国では全ての学校で、Bikeabilityの授業を行っているのですか?

現時点では必須科目にはなっていませんが、全国の約半数の学校で導入されており、約1,800名のインストラクターが年間20,000人の子供たちに教えています。

4、誰が授業料を払っているのですか

英国では講習会にかかるほぼ全ての費用を運輸省(DfT)が助成しています。そのため、子供たちは無償で授業を受ける事ができます。授業料以外に費用が発生する場合には、学校や親が負担しています。

5、もし、子供たちが自転車に乗れない場合はどうするのですか?

Bikeabilityは、自転車に乗れるけれども安定していない子供たちを対象にしています。自転車に乗れない子供たちがいる場合には、ライディングスクールを実施することもあります。

6、受講にはどのような自転車・服装・装備が必要ですか?

子供たちのサイズにあい、空気を入れ、ブレーキのよく利く調整済みの自転車とヘルメットが必要です。服装に関しては、視認性の高いもの、反射板のついているベストなどがあればそれを使います。また、天候により雨具等も必要になります。

7、もし、受講した子供が修了証をもらえなかったら?

Bikeability自転車教室を終了し、決められた項目をクリアしていれば、修了証が発行されます。クリア出来なかった場合は、合格点に達していなかった項目を受講生に伝え、その項目を重点的に復習してもらいます。